安川十郎「健康寿命が長い」「平均寿命と健康寿命の差が少ない」ことを誇れる地域にするのが私の夢です。

葛藤の処方

  • 2023.12.31

 日々、様々な薬を処方していますが。一点の曇りもなく100%の自信をもって処方できているわけではありません。
 この薬が最適だったのだろうか。この用量で適切だろうか。この日数で過不足ないだろうか。この説明で理解してもらえただろうか。副作用の可能性は許容範囲だろうか。他院の処方と競合しないだろうか。この値段は納得してもらえるのだろうか。
 しかしそんな悩みを顔に出し、自信なさげに患者さんに薬を出すわけにはいかず。かといって、望んだ効果が得られない可能性や副作用の説明をしないのも不誠実。しかししかし、起こりうる全ての副作用を説明していては不安を煽るだけですし、また、薬学知識のない方に詳細な情報を伝えることは困難です。
 そんな悩み多き “薬の処方” という行為。なかでも葛藤が尽きないのが。

必要性の低い薬の処方

です。
 何となく続けている痛み止め。風邪に対する抗生剤。食べ過ぎによる胃もたれに胃薬。軽度のアレルギーに対してステロイド。曖昧な理由のビタミン剤。貰えるから貰っている湿布。食欲がないからと経口流動食や点滴。痩せると噂の漢方薬。
 これらの処方をするとき、私は二つの葛藤を抱えています。

その一「患者自身の不利益に対する葛藤」
 どんな薬にも副作用があります。また、長期服用や誤った用法で、健康被害の可能性もあります。
その二「税金から捻出されていることに対する葛藤」
 保健医療で処方される薬代の7~10割は税金で賄われます。必要性の低い処方は、積もり積もって社会保障費を圧迫します。

 恐ろしいことに、この二つの事案は、諦めても私に何ら不利益をもたらしません。それどころか、処方を渋った場合、患者に疎まれる可能性すらあります。「〇〇先生は出してくれたけどなぁ」と言われたとき、平静を装っていますが内心はけっこう焦っています。
 「むやみにこの薬を飲むのは体に良くないけどなぁ。でも本人が望んでるんだから、ま、いっか」
 「この薬出すの税金の無駄遣いちゃうかなぁ。でも俺のフトコロが痛むわけでもなし、ま、いっか」
 そう呟いて折れそうになります。

 今のところ何とか踏ん張っていますが。皆様も、薬の適正使用にご協力よろしくお願いします。
 

安川クリニック

院長

安川 十郎

診療科目

内科・在宅診療

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