安川十郎「健康寿命が長い」「平均寿命と健康寿命の差が少ない」ことを誇れる地域にするのが私の夢です。

喫煙率 犯罪率

  • 2023.10.31

 喫煙率と、うつ病などの精神疾患には正の相関があることが知られています。年代や文献もよりますが、躁うつ病の77~90%は喫煙者と報告されています。
 喫煙率と学歴には負の相関が認められています。
 犯罪者は喫煙率が高く、男性受刑者の62.3~87.6%が喫煙者との調査があります。
 つまり、喫煙者は・・・

 と安直に決めつけてはいけません。「相関関係」と「因果関係」は別のものだからです。
 有名なデータに「アイスクリームの売り上げと溺死事故には正の相関がある」というものがあります。これは、アイスクリームを食べると水難事故に会いやすい、ということでしょうか?
 あるいは「夜間の交通事故被害者の服装を調査したところ、明るい色を着ている人が8割、暗い色を着ている人が2割だった」というデータがあったとして。夜間の事故を防ぐためには、暗い色の服装を選ぶべきでしょうか?
 もちろんこれらは誤解で、前者は暑くなるとアイスクリームの売り上げも伸びるし、水難事故も増えるからです。後者は、夜間は ほとんどの人が明るい服装をしていたからです。「相関」すれども「因果」せず、です。
 統計データの取り扱いには細心の注意が必要です。例えば「シートベルトを着用している人の事故死亡率は低かった。だからシートベルトは有用だ」というデータも、そのまま鵜呑みにはできません。シートベルトをしている人は、もともと安全運転傾向が強いことが予想され、小規模の事故が多い可能性があります。シートベルトの救命率を正しく算出するためには、同程度の事故で比較して、シートベルト着用による救命率を調べる必要があります。(その点も踏まえ、シートベルトの有用性は証明されています)

 さて、ここまでが、これからの乱暴な仮説のための長い前置きです。
 犯罪者の喫煙率が高いからと言って、すなわち「タバコを吸うような人は犯罪者が多い」あるいは「喫煙には犯罪を助長する効果がある」とは限りません。
 相関関係と因果関係は全く違うもの、と知った上で。その上で、私は「犯罪と喫煙に因果関係がある」という仮説を立てています。

 犯罪者の喫煙率が高いことは、わりとよく知られています。しかしその因果関係は考察されていませんでした。
 それを感じたのは、診察中、禁煙指導しているとよく聞く、「やめた方がいいと分かってるんですけどねぇ」「体に悪いと知ってはいるんですが」などのフレーズを聞いていたときです。
 そうです。多くの喫煙者は

悪いと分かっていることをする

人々なのです。これって、犯罪者寄りの発想ですよね? いやいや大袈裟ではなく。
 もう少し詳しく言うと、喫煙者は、将来のリスクよりも目先の快楽を優先する人たちです。あるいは、科学的データよりも自分に都合の良い流言を信じる人たちです。
 例えば、これと真逆の発想の代表に、SDGs(持続可能な開発目標)があります。SDGsは平たく言うと、「これからのために、科学的根拠を持って今少しだけ工夫しましょう我慢しましょう」という未来志向です。
 ですから、喫煙者が「私もSDGsは大事だと思う」と言っても全く信用できません。自分の未来の健康にすら配慮できない人が、SDGsに共感・賛同できるはずがありません。

 喫煙者は程度の差こそあれ「悪いと分かっている選択をする」「理性的な行動よりも、本能的な欲求を優先する」傾向にあるので、当然、犯罪者率が高いと予想されます。
 だからと言って、日本の喫煙率が下がれば犯罪率が下がる、というものではありません。ただ、喫煙の害がよく知られていなかった昔と違い、これだけ有害であることが証明されているのになお喫煙を続けるという思考は、遵法精神の欠如と近いものがあると思われます。

 「犯罪者の喫煙率が高いのは、そもそも喫煙者は悪いと分かっている選択ができる傾向にあるから」という仮説を提唱します。残念ながら、この仮説では、喫煙率を下げられたとしても犯罪発生率を下げることはできません。しかし、最後まで頑なに喫煙を続ける人は、個人の善悪判断が重要な職業、例えば警察官や経理部には配属しないことが推奨されます。医師もですかね?

安川クリニック

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安川 十郎

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