安川十郎「健康寿命が長い」「平均寿命と健康寿命の差が少ない」ことを誇れる地域にするのが私の夢です。

違和感を感じる日本語 2

  • 2023.08.31

今回取り上げるのは、「させていただきます」の乱用について、です。
ちなみに表題の「違和感を感じる」は重言と承知の上で使用しています。念のため。

議論の的「させていただく」問題

 この問題は、けっこう難解で、文化審議会の「敬語の指針」でも大きく取り上げられています。いわく、「させていただく」という敬語は、①相手の許可を得て行い、②そのことで恩恵を受ける場合 に使うのが適切である、とのこと。この指針で挙げられていた例文は
 1)コピーを取らせていただきます。
 2)それでは、発表させていただきます。
 3)本日、休業させていただきます。
 4)私は、新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。
 5)私は、○○高校を卒業させていただきました。
 の五つ。どの使い方が正しい、あるいは間違っていると感じますか?

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 正解は・・・。原則に従った適切な使用は1)だけなのですが、状況、背景、文脈によっては2)~5)も許容される、とのこと。そんな、あいまいな・・・・。
 個人的な見解としては、「させていただく」は、「させてもらう」の謙譲語にあたるので、「してもよいですか?」と言い換えられるときに使えるのだと思います。つまり、一方的な宣言で相手に拒否権のない2)~5)は、やはり間違っていると感じます。

 という文法的な解釈はさておき。私が「させていただきます」の乱用に違和感がぬぐえないのは、その安易な使われ方に対してです。

 一つ目。
 敬語は、当の日本人でも正しく使用するのが難しい高度な言語です。だからその使用には、それなりの格式が求められると思うのです。例えば、同じ客をもてなす場合でも、居酒屋で賑やかに酒を酌み交わすなら多少ぞんざいな態度もゆるされるでしょう。しかし、お茶会などでは、お互いそれなりの立ち居振る舞いが求められます。居酒屋では「ぜんぜん大丈夫!」「とんでもございません」などと言ってもお咎めなしでしょうが、茶室では眉をひそめられるでしょう。
 格式高い場面では、それなりの知性、知的な振る舞いが必要です。茶室でお茶をいただくときは茶道の心得が必要なように、「させていただく」という難しい敬語を使うなら、その適切な使い方を学んでおくべきだと思うのです。

 二つ目。
 敬語は相手に敬意を表すために使う言葉です。なので、敬語を適当に安易に使うことに違和感があります。「させていただきます」「いたします」あたりをくっつけておけばそれっぽくなるんじゃね?と手を抜いてるように感じます。
 目上の人を、実は内心小バカにするつもりなら、そんないい加減な使い方もありでしょう。ですが、敬意を払うつもりなら、それなりに苦労して、緊張して、できるだけ正しい敬語を使おうとする態度が必要だと思うのです。

 というわけで。個人的な見解となりますが。「敬語という格式高い日本語」「敬語は相手への敬意が必要」という観点から、「させていただきます」の乱用に警鐘を鳴らさせていただきます。

安川クリニック

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