安川十郎「健康寿命が長い」「平均寿命と健康寿命の差が少ない」ことを誇れる地域にするのが私の夢です。

特集 もしものときの人生会議 寄稿原案

  • 2020.11.01

市報「だいとう」11月号 人生会議 に寄稿した原案です。もしよければ、カットされた部分を探してみてください。

1. なぜACPが求められているのでしょうか?
 私は「恐らく本人は望んでいない医療」を受けている患者さん、その介護をする家族、を数多く見てきました。そして「できるだけ長生きさせることが医療のあるべき姿、親孝行」とは限らないのではないか、と考えるようになりました。
 私以外にも、そう考える人が増えてきたのではないでしょうか。現状の医療は延命を優先する傾向にあります。ですから自分や家族の意思を明確にしておかないと、つまりACPをしておかないと、望んでいない状態になる可能性があるのです。

2. ACPはいつから始めればよいのでしょうか?
 「いつでも」「早ければ早い方がよい」、と言いたいところですが。ACPのように始めるきっかけが難しい問題は、曖昧な言葉では先送りされてしまいます。「生活習慣に気をつけてください」という言葉では、患者の行動は変えられないように。
 さすがに小中学生は無理だとしても。ACPが当たり前になることを願う私としては、「18歳の成人の日にACPについて家族と話し合ってもらう」程度の具体的な指針を作る必要があると考えています。

3. ACPを行うにあたり、大切なことは何でしょうか?
 まず、自分の考えや希望を素直に遠慮せずに言うこと。
 例えばACPを勧めていると、「人工呼吸器や胃瘻をしてでも長生きしたい」と言いにくそうにしている人もいます。誤解されている方がいるかもしれませんが、ACPとは「延命や蘇生処置を断ること」ではありません。生死に関わる自分の正直な気持ちを、家族や医療関係者に伝えておくことです。
 それからもう一つ。一度決めたら変えられないものではありません。いつでも何度でも変更できることを知っておいて下さい。ですから、まず今現在の気持ちを話し合ってみて下さい。

4. 市民一人ひとりができることはありますか?
 先ほども述べた通り、多くの人は具体的な指摘でなければ行動を起こしません。なので、「一人一人ができること」は、「この文章を読んだ今日この日にACPを始めること」としておきます。残念ながら、今日行動を起こさない人は明日も明後日も動きません。今日ACPを始めない人は、翌朝目が覚める頃にはACPのことは忘れているでしょう。
 家族の死について話すことは「縁起でもない」と敬遠されがちです。しかし、事故や病気に備えて保険を検討すること、地震や台風に備えて対策を立てておくこと、は縁起の悪いことでしょうか。
 死は必ず訪れます。だからこそ話しにくいことも分かります。ですが避けて通れないとても大切なことです。たった一人でも、この原稿を読んでACPを始めてくれる人がいてくれれば、と切に願います。

安川クリニック

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