安川十郎「健康寿命が長い」「平均寿命と健康寿命の差が少ない」ことを誇れる地域にするのが私の夢です。

「血圧が高いですね。薬を飲んで下さい」

  • 2022.03.28

 私の医者人生は外科医としてスタートしました。
 そして、外科医の頃は、患者の方から助けを求めてやって来ました。曰く「お腹が痛いんです!」「内科で癌だと言われました!」
 私は腹部外科だったので、命にかかわる病気がほとんどです。手術の説明って、成功した時のバラ色の話はほぼなく、大半がリスクや術後障害などの不利益に関する話なのですが。「じゃあ やめときます」という人はいませんでした。
 患者から請われて治療するのですから、話は簡単です。「先生、お願いします」「分かりました。何とかしましょう」

 さて。開業医となり。ある日。
 患者に生活習慣病の治療を説明しているときに、ふと気付きました。
 「診察室での血圧だけでなく、自宅で測った血圧も高めですねぇ。高血圧症と考えられます。血圧を下げる薬を飲んで下さい」
 ・・・・・・ん? 「飲んで下さい」??
 私は何故、患者に治療を受けることをお願いしているのでしょう?

 外科医の頃の私  患者「助けて下さい」  → 医者「分かりました。何とかしましょう」
 内科医の私    医者「薬を飲んで下さい」→ 患者「え~。飲まなきゃダメですか?」

 まるで、私がお願いして “治療を受けて頂いている” みたいじゃないですか。それは、患者の身を案じて?クリニックの経営のため?いずれにしても、釈然としないものを感じました。

 それから。今でも状況に応じて使うこともありますが、なるべく「薬を飲んで下さい」というセリフは言わないように心掛けています。
 正しくは。
 「あなたは高血圧症と考えられます。とくに脳梗塞の危険性が高まることが分かっています。薬を使って血圧を下げれば脳梗塞の危険性を減らすことができますが、通院するために手間ヒマ費用がかかるというデメリットがあります。薬の副作用もゼロではありません。ちなみに、生活習慣の改善で血圧を下げられる可能性もあります」と説明した上で。
 「さて。どうしても薬が欲しいというのなら、出してあげないこともないけれど、どうしますか?」
 ・・・・・・などと言うはずもなく。
 実際は、高血圧の程度や合併症によって「まず生活習慣を改める努力をしてみましょう。3カ月ほどしてそれでも血圧が下がらないようだったら、薬の力を借りてみませんか」だったり、「まず薬を使って血圧を下げましょう。今後、生活習慣病の改善などで血圧が下がってきたら、減らしたり止めたりできるかもしれません」と説明することになります。

 やはり医者から「飲んで下さい」と言われて渋々治療を受けるのではなく、患者から「薬を下さい」と頼まれて治療する方が正しいと思うのです。そう言ってもらえるよう、患者に説明するのが内科医の仕事だと思うのです。治療する利益も不利益も、患者自身が負うものなのですから。
 私の病気の説明スキルが上がれば、いつか、「センセイ、糖尿病を放っておけないことが良く分かりました。どうか血糖値を下げる薬を出して下さい!」「え~。仕方ないですねぇ。そこまで言うのなら処方してあげましょう。でも生活習慣の改善が前提ですよ」と言える日が来るかもしれません。

安川クリニック

院長

安川 十郎

診療科目

内科・在宅診療

住所

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