安川十郎「健康寿命が長い」「平均寿命と健康寿命の差が少ない」ことを誇れる地域にするのが私の夢です。

産業医講習会

  • 2021.09.22

 9月18日、19日、20日と産業医講習会を受けてきました。9/18を臨時休診日にしたのはそのためです。朝9時から夕18時まで、3日間みっちり全14コマの長丁場で、なかなかにハードです。5年に一度、産業医免許の更新のための講習で、日頃からコツコツ単位を取ることもできるのですが。移動などの手間ヒマを考えると、まとめて取る方が効率的と考え、これで3回目です。ちなみに3日間で済むのは免許更新で、最初の免許取得コースは全6日間のさらに過酷な日程となっています。

  3回目ともなると「この講義、また同じ内容で聞き飽きたな…」となりそうに思いますが。5年もたつと制度や社会情勢が変わっている事、実践講義なので実務を経験してから聞くと新しい視点がみえる事、それなりの代金を払っているので講師も熱意をもって講義している事、などから毎回新たな知見を得ることができます。
 例えば今回の講習会では、終身雇用制の終了、IT化の代償としてメンタルヘルスがさらに重要に、コロナの影響、などが取り上げられていました。その中でも特に印象に残ったのが。

ノーリフティングケア

 介護や看護での人力による患者の抱き上げを原則禁止に、という運動です。

 日本では、機械化や法による制限で、製造業・運輸業・建設業などでは業務要因による腰痛は過去20年間減り続けています。しかし、20年間増え続けている業界が一つだけあります。お察しの通り、保険・衛生業です。他業種が半分以下に減っているのに対し、保険・衛生業は6倍以上に増えています。(ちなみに腰痛が多そうな農業は、ほとんどが個人事業で産業医がおらず、労災申請がないため統計がありません)

 その大きな原因が、介護における「抱き上げ」です。

 それ自体は以前から知っていました。例えばオーストラリアでは人力による抱き上げは法律で禁止されており、抱き上げを行った看護師介護士、抱き上げを看過した上司、その両方が罰せられます。日本でも厚生労働省が2013年頃より原則禁止の方針を出しています。それでも、なんとなく、人が抱き上げた方が温かみがあって、機械などでサポートすると冷たく感じる、的な風潮があって、看護師や介護士、家族に肉体的な負担を強いているのが現状です。しかし腰痛が原因の離職者も増えており、やはり根本的な解決が急がれます。
 実は。考えてもみてください。あなたが身体が不自由になった時、さほど力持ちでない女性1人か2人に、体の下に腕を差し込まれて持ち上げられたとしたら。不安ではありませんか?体に力が入りませんか?機械や道具を使った方が、よほど患者側の立場に立った医療だと思います。もちろん、機械や道具を用意するためには、費用や時間がかかり、そう単純な問題ではありませんが。

 私が講義を聞いていてショックを受けたのは。

 高齢の寝たきり女性にしばしば見られる姿勢。軽く肘と膝を曲げて少し丸まるような姿勢。あれが実は抱き上げ介護が原因かもしれない、という見解でした。
 寝たきりの患者が抱き上げられると、その不安定さから、残されたわずかな筋力を使って体を安定させようと体を硬直させます。それを繰り返した結果、肘や膝をわずかに曲げた状態で関節が拘縮し、少し丸まった姿勢になるということでした。
 そういえば、あの姿勢は、男性など大柄な患者では見ない気がします。1人もしくは2人での抱き上げができないから、かもしれません。

 現在、団塊世代が介護を受ける側になりつつあり、それを介護する側が腰痛で離職していては満足な介護ができなくなってしまいます。抱き上げの禁止は急務です。そんな中、全国で高知県だけが保険・衛生業の腰痛発生件数を減らしています。ご興味ある方は「高知」「ノーリフティング」で検索してみてください。

安川クリニック

院長

安川 十郎

診療科目

内科・在宅診療

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