安川十郎「健康寿命が長い」「平均寿命と健康寿命の差が少ない」ことを誇れる地域にするのが私の夢です。

患者と タバコと 医者と

  • 2021.08.30

 以前、ある気管支喘息の患者の治療を担当していたことがあります。その患者は喫煙者だったので、受診のたびに禁煙の必要性を説明していました。私がしつこく言い過ぎたのか、ある時「前の先生は俺がタバコ吸うの認めてくれてたけどな」と煙たがられてしまいました。タバコの話だけに。
 さて。喘息の治療に禁煙は必須です。そのお医者さんがどうして喘息患者の喫煙を許容したのか。三つのパターンが考えられます。

1.患者を一人の人間として治療する気がない
 喘息に対して、喫煙は直接の悪化要因です。これを止めないのは、目の前の人間を患者としてではなく、客として見ているからです。すなわち、喘息を治す気はないのです。通院して受診料を払い、薬を買ってくれればいいのです。むしろ、治らない方がいいのかもしれません。
 例えば、生徒がテストで0点をとっても、宿題を忘れても、全く注意しない教師がいたとして。その教師はよい教師でしょうか。一定時間、教壇に立っていればよいと考えているのではないでしょうか。おそらくその教師は、生徒の将来に全く関心が無いのではないでしょうか。

2.医学を信用していない あるいは理解できていない
 医学は主に生物学と統計学からなります。その理解には科学的思考が必要です。
 私自身、自分の体験だけで「確かにタバコ吸ってる人は早死にだなぁ」と感じることはできません。人の寿命には喫煙以外の要素も数多く絡んでいるからです。なのに「タバコは、各種癌・心筋梗塞・脳梗塞・肺疾患・その他もろもろの病気の原因となります」と患者に説明しているのは、医学を信用し学んでいるからです。
 タバコの害は、なかなか個人が「実感」できるものではありません。多くのデータからなる科学的な事実を「理解」する必要があります。患者の喫煙を止めない医者は「感覚的な治療」で済ませてしまい、医学的データを信用していないか、理解できていない可能性があります。
 例えば、「法律や証拠は参考に過ぎない。俺の長年の勘を信じろ」なんて刑事が現実にいたとしたら。怖くありませんか。経験や勘は大きな武器ですけれども、やはり証言や物証など客観的な事実に基づいて捜査してもらわないと。医者も同じです。
(そういえば昔のドラマは、科学的な捜査を進める新米刑事が行き詰まり、ベテラン刑事が経験や勘で颯爽と解決する、ながんてパターンが多かったような。最近は見かけませんね。これも時代の流れで、医療ともリンクしている気が)

3.まずは患者との信頼関係を築いてから と考えている
 おそらく大半の医者がこれに該当するのでしょう。私のように、いきなり禁煙指導をして患者から煙たがられるよりは有効です。確かに、まずは友好的な関係を築いてから禁煙を説得した方が禁煙させられる可能性が高いかもしれません。
 あるいは、禁煙を強要することで通院をやめてしまって、その他の疾患の治療がおろそかになるくらいなら、せめてできる範囲の治療だけでも受けてもらおう、という妥協案なのかも。
 それでもやはり、医者が責任をもって、患者を一人の人間として治療するなら、医学に基づいた治療をするなら、禁煙指導は避けられないと考えます。

 もしあなたが喫煙者で、主治医が禁煙指導をしていない場合。1~3のどれに当てはまるかよく考えて下さい。

安川クリニック

院長

安川 十郎

診療科目

内科・在宅診療

住所

〒574-0022
大阪府大東市平野屋1丁目3-9

電話番号

072-889-3209

FAX番号

072-889-3210

アクセス

JR学研都市線住道駅より徒歩15分
休診日:土曜日午後・日曜日・祝日
9:00~12:00 訪問
13:00~16:00 訪問 訪問 訪問 訪問 訪問
17:00~19:00 訪問