ステート ウオーマー

　この冬、診療行為でちょっと工夫してみたことがあります。
　冬場、冷たくなった聴診器をいきなり体に当てると、かなりヒヤッとしますよね。聴診の前に、医者が手の平などで聴診器をゴシゴシするのを見たことはないでしょうか。とくに、新型コロナが流行中で発熱患者などの診療は屋外でしているため、金属製の聴診器はかなり冷たくなってしまいます。
　そこで

　『ステートウオーマー（聴診器加温器）』なるものを自作してみました。ステートとは聴診器のことで、stethoscopeの略称です。

　といっても、『カイロポーチ』に『充電式カイロ』あるいは『使い捨てカイロ』を入れ、そこに聴診器を突っ込んだだけ。これで聴診器はかなり暖かく、ややもすると少し熱いと感じるほどになります。このステートウオーマー、患者さんに大変好評で…………

　…………と予想していたのですけれど。
　この冬、延べ数百人の患者さんに、この暖かい聴診器を当て続けたにもかかわらず。結局、誰一人として感想を言ってくれる人はいませんでした。冷たい聴診器が来ると身構えていて、少し熱いくらいの聴診器が当たると驚いたり怪訝そうな顔をする人はいましたが。それ以上の反応はありませんでした。
　聴診器が冷たいことは、とくに気にするほどのことではなかったのでしょうか。聴診器が暖かいことは、とくに喜んでもらえるほどのことではなかったのでしょうか。

　いやきっと心の中では感動していたはず。

　商品化のお誘い、お待ちしております。