ミニマルケア

ミニマム(最低限)ではなくミニマル(最小限)
「最小限医療」を正確に英訳するなら"minimal medical care"ですが
語感を優先して省略しました

私には やりたいこと があります
それは…「本人が望む治療だけをしたい」

当たり前に聞こえるかもしれませんが
果たしてそうでしょうか?

もしかすると
よく分からないけど医者が勧めるから…
薬を飲んでいませんか?

あるいは
本人の望みとは違うかもしれないけれど 病気は治すものだから…  治療していませんか?

私はできれば「その治療を受けたい」と自分から言う人だけに治療したい
しかし これを言葉通りに実践すると二つの問題が生じます

  1. 問題の一つ目
    医学的に勧められる治療を嫌がったらどうするの?
    例えば 血圧がすごく高いけど治療は要らないと言う人は放っておくの?
  2. 問題の二つ目
    本人の意思が分からない時はどうするの?
    例えば 認知症や脳梗塞で判断力がなくなった人は治療しないの?

どう対処するのか…
私は ミニマルケア を提唱します

ミニマルケア(最小限医療)実践は私が最も “やりたいこと” の一つです

しかし それは 万人に受け入れてもらえる治療方針ではなく少し丁寧に話す必要があります

私の“やりたいこと” を 順を追って説明していきます

ミニマルケア

最小限医療

ミニマム(最低限)ではなくミニマル(最小限)

「最小限医療」を正確に英訳するなら"minimal medical care"ですが
語感を優先して省略しました

私のやりたいことは四つのカテゴリーに分かれます

①普通で実現できそう②普通で実現が難しそう③特殊で実現できそう ④特殊で実現が難しそう

ミニマルケアは③にあたります

比較的 実現の可能性があり 反対意見も少なそう

①この地域で 在宅医療 在宅看取りを充実させたい

地道に努力すれば実現できるかもしれません
とくに反対する人もいないでしょう

実現は難しいけど反対意見は少なそう

②在宅医療大東市スタイルを広めたい

一般に地域の在宅医療を支えるためには 中規模以上の在宅専門病院とそこに勤める10人程度の在宅専門医が必要です
しかし 現実問題として それが可能なのは一部の都市部だけ
そこで 数軒の診療所と基幹病院の協力でも出来るということを実証し そのシステムを広めたい

比較的 実現しやすいが反対意見は多そう
③ミニマルケア (最小限医療) の実践
その根本は 冒頭の言葉を繰り返すことになります
「本人が望む治療だけをしたい」
そう強く思うようになったのは “そうではない” 患者を数多く見てきたからです

「本人が望む治療だけをしたい」
という私の思いは 言い換えるならば
「本人が望まない治療はしたくない」

ということです

つまり “そうではない” 患者とは 自らが望んでいない治療を受けてきた方々のことです
もう「お医者様にすべてお任せします」という時代ではないと思うのです

本題に入る前にくどいくらいに断っておきますが
ミニマルケア は選択肢の一つであり「皆がそうするべき」と正しさを主張しているわけではありません

できる限りの治療(フルケア)を否定しているわけではありません
本人がフルケアを望めば受ける権利があります
また 自身が望んでいなくても「医者や家族が必要と判断した治療は受けさせるべき」という考え方もあると思います

しかし治療は義務ではありません
本人の意思を最大限尊重して 治療を最小限にする …そういう自由があってもいいのではないでしょうか

ミニマルケア ケース1

本人は理解あるいは納得していないけれど…

血圧が高いから コレステロールが高いから 血糖値が高いから 尿酸値が高いから 骨密度が低いから 肝臓の数値が悪いから 腎臓の数値が悪いから 心臓病が疑わしいから 脳梗塞を起こしやすい歳だから 痰が多いから 消化不良の訴えがあるから しびれの訴えがあるから 認知症の可能性があるから

などの理由で薬が増えてしまう場合があります
そして いったん出された薬はなかなか止まりません

実は医者自身も服薬理由がよく分かってないけど
「以前から処方されているので」と続けている薬もあります

(これは私の個人的な体験談です他の先生は無いかもしれません)

そこで ミニマルケア (最小限医療)を提唱します
すなわち 本人が希望する治療だけ 受けてもらいます
例えば問題点の一つ目であげた「血圧がすごく高い人」でも「高血圧を治療した場合」「高血圧を放置した場合」の説明を聞いた上で それでも本人が望まなければ治療はしません

“医学的に正しいこと” が “人生において正しいこと”とは限りません
本人にとって何が幸せなのか それを決めることが出来るのは本人だけです
「長く生きることが最優先」「できる治療は受けるべき」という考え方も尊重します

しかし 人によって何が一番大切かは違います
医者はあくまで患者の助っ人
医者の価値観を押し付けるような治療では「医者はそんなに偉いのか 何様のつもりだろう?」「あぁ お医者様か…」と言われても仕方ありません

医者は患者の保護者ではない
医者は人様の生き方を決めていいほど偉くない
自分の人生は自分で決めるものと私は考えます

ミニマルケア ケース2

認知症の進行などで本人の意思がない状態でも
「病気があれば治すもの」と 積極的に治療が行われる場合があります
また 本人が望んでるのか どうか分からない時でも「少しでも長生きさせるために」と胃に管をつないで栄養剤を流し込んだり 喉に穴を空けて呼吸を補助する場合があります
大切な人に「できるだけ長生きして欲しい」と願うのは人として当然の想いです

そして それに勝るとも劣らない想いとして「苦しませたくない」があります
問題は
「長生きしてほしい」と「苦しませたくない」の両立が難しい時があることです
「できるだけ長生きを」と延命処置した場合
自然な終焉を薬や道具のチカラで引き延ばすのですから どこかに無理が出てしまうかもしれません

「できる限りこの世に留まる事」を優先するのか
「苦しみが少ないこと」を優先するのか
ミニマルケア (最小限医療)では
「それを決められるのは本人だけ」と考えます
すなわち 本人の意思がない治療はしません
例えば問題点の二つ目であげた「認知症などで意思がない」場合 本人の同意のない治療はしません
もちろん日々の診療は続けます
「本人があらかじめ望んでいた治療」「苦痛を取り除くための人道的な治療」「家族の負担を減らすための治療」など最小限の医療は行います

「治療しない」「延命処置をしない」のは決して「見捨てる」「寿命を縮める」ことではありません
むしろ「治療」「延命」が「無理をさせる」ことにつながる可能性があります

本人が「してほしい」と望む治療をすることには全く異存ありません

しかし本人以外の意思…「まだ生きていてほしい」「できることはしてあげたい」などの理由で治療を受けさせる場合は 「本人はどう感じるだろう?」「もし自分がされたら?」などを考えるべきです

人が様々な苦しみを乗り越えて生きていくのは 生きる喜びと死への恐怖があるからです

その喜びや恐怖を感じられるのは それによって生きていこうという道を選択できるのは 自分の意思があるからです

自分の意思がない状態で生きていくことに意味を感じない人もいるでしょう
そんな人のために ミニマルケアという選択肢やACPなどの意思表示が必要だと考えます

ミニマルケア まとめ

ミニマルケア (最小限医療)では
医学的な正当性に関係なく
(本人が病状を正しく理解しているとの前提で)
本人が希望する最小限の治療だけ
受けてもらいます
医学的な必要性に関係なく
本人の意思によらない治療はしません
(日々の診察や苦痛を防ぐ治療など最小限の医療は行います)
もちろん世の中は白と黒に塗り分けられません
実際は フルケア⇔ミニマルケア の中間くらいを選ぶ人が多いと思います
しかしその中間が存在するためには ミニマルケアという選択肢が必要だと考えます
また 決して治療の必要性を軽んじているわけではありません
とくに「育てるべき子供がいる」「養うべき親がいる」「会社などで病気が悪化すると周囲に迷惑をかける」人などには治療を受けるよう説得に努めます
医者がミニマルケアを提唱するためには 逆に
「病気を治す技術」以上に「治療の必要性を説明する技術」が重要だと感じています

これからのお話は一つの「考え方」であって 「そうあるべき」と正しさを主張しているわけではありません
「当院では この思想に基づき治療しています」という意味でもありません
ルールと倫理に反しない限り 最大限 患者本人の意思を尊重した医療を行いたいと考えています
しかし 私の頭の中にその考え方があるのは事実です
考え方の違いを理由に こちらから診療を拒否することはありませんが そんな考えを持った医者に診てもらいたくない」と思う方もいらっしゃるでしょう

かなり非現実的な上に 反対意見も多いでしょう
④この地域の 将来的には日本の 平均寿命を縮めたい
日本の平均寿命が世界トップである理由は「医療の充実に伴う新生児死亡率の低さ」などが挙げられます
そしておそらく「延命治療の普及」も要因の一つです
“健康寿命”という考え方を知っていますか?

健康寿命

厚生労働省の定義では 「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」

“平均寿命”とおおよそ10年前後の差があります

世界の 健康寿命 と 平均寿命

健康寿命の
順位
国名 健康寿命
(年)
平均寿命
(年)
平均寿命と
健康寿命の
差(年)
平均寿命と
健康寿命の
差の順位
1位 シンガポール 76.2 82.9 6.7 5位
2位 日本 74.8 84.2 9.4 31位
3位 スペイン 73.8 83.1 9.3 30位
4位 スイス 73.5 82.9 9.8 35位
5位 フランス 73.4 83.3 9.5 32位

平均寿命が長いほど “差” も大きくなるので 日本の31位が一概に低いとは言えません
また“差” が大きいからといって 国民が不健康や苦痛を強いられているわけではありません

現状を知ってもらうためのデータとして提示しましたが 「日本は健康寿命と平均寿命の差が大きい不幸な国だ」と言っているわけではありません
むしろ 健康上の問題で支援が必要な状態になっても 日常生活を送るのに支障が少ない豊かな国です
そして 豊かであるがゆえに 本人が望んでいない延命でも容易に出来てしまう余力があります
健康寿命を過ぎたからといって 不健康で不幸とは限りません
でも 望まれない延命が安易に行われてしまうと 本人も家族も不幸になってしまう可能性があります
私はそのことをきちんと話し合いたいのです
健康寿命を延ばすという困難で崇高な使命は 他の有能な先生にお任せします
私は ただ話し合うだけで実現可能な望まれない延命処置を減らすことで平均寿命を縮めたいと思います
そして大東市を 大阪府を 日本を
「平均寿命が…」と単純な長さを自慢するのではなく
「健康寿命が長い」
「平均寿命と健康寿命の差が少ない」

ことを誇れる地域にするのが私の夢です

安川クリニック

院長

安川 十郎

診療科目

内科・在宅診療

住所

〒574-0022
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